4/29/2012

Twitterで学生が研究内容を暴露している件について

私は現在博士課程に所属しており、今まである材料について研究を行なってきました。その材料についてはTwitterで検索をかけて、タブで検索結果を常に表示させるようにしています。勿論情報収集はgoogle scholar のメールアラートやジャーナルのRSS等も利用していますが、Twitterで検索をかけると研究していない人がその素材についてどういった点に注目しているのか、ニュースサイトのリンク等の情報が得られるのではないかと思ってTwitterで検索してみたわけです。

検索をしてみると、確かに期待した情報も数多く得られたのですが、学部や修士の学生が「俺こんな実験やってます!」とか「こういう研究テーマを行なっています!」という呟きがかなり引っかかり、非常に危機感を覚えました。「お前、正気か?」くらいのテンションでした。

なぜ研究テーマや実験内容をつぶやく(ネット上で公開する)のがまずいのかというと、競合する研究者に情報が漏れる可能性もあるからです。(記事執筆当初は特許に関する記述がありましたが、特許法が今年度から改正されたため特許に関する記述は削除いたしました。詳細は追記、コメントをご確認下さい。)

以下に今までに私が見つけた研究者としてアウトではないかという例を挙げておきます。

ケース1、実験内容をツイート、プロフィールに名前を載せているので研究室を特定

とある大学の学部生が「○○という実験を行なっており、それが上手く行かず困っている」という内容のつぶやきをしていました。その学生はプロフィールに大学名と本名を載せていたので検索すると研究室のページにたどり着き、その研究室には各学生のプロフィールに簡単な研究テーマも掲載されていたので簡単にそこにたどり着きました。研究室としては研究テーマしか公開していませんが、学生がTwitterでつぶやくことによって研究に対するアプローチを推測することができます。このケースは学生が本名を公開しているので容易に研究室のサイトまでたどり着きましたが、大学名だけでもわかれば「この大学ならこの先生の研究室かな」と推測するのは学会でどういう人が発表するかをよく知る人ならさほど難しいことではないと思います。


ケース2、研究についてTwitterで議論

ある学生が研究室の助教に「こういう実験結果が出たのだが、どう考察したらいいか」を質問していました。2人ともツイートは非公開設定になっていなかっため、会話を追うことができました。その実験結果については論文や学会発表にも載らない程度の些細な話でした。しかし、そういった細かいテクニックが実は研究結果に極めて大きな影響をあたえることもあります。論文を読んでいると敢えて細かい話を書かないことや意図的にデータを載せないこともあるのではないかと感じることがあります。そういった論文に載らないような話を学生は「大したことないだろう」と思ってつぶやくのは色々な意味で危険なのではないかと思います。


ケース3、他人の研究内容をツイート

「友人がこういった研究をやろうとしている」というつぶやきを見たことがあるのですが、今までの論文・学会発表で見たことのないような革新的なアイデアで研究テーマ自体をばらさない方がいいのではないかというものでした。それを友人に話してしまった学生にも責任がありますが、自分がいくら情報をネット上に掲載しないようにしたとしても友人に暴露されてしまえば他の研究者が目をつけて先を越される可能性もなくはないです。私も研究内容については実験内容や実験が上手く行っているかどうかさえも呟かないようにしていますが、研究室の他の学生に暴露されてしまう可能性もゼロではありません。


特許が申請できないまではいかないにしても情報が他の研究機関に漏れることは研究者として致命的なことである、ということを学生はもっと理解したほうが良いと思いましてこのような記事を書きました。上記のようなケースも既に発生しているので、大学や研究室は学部生や修士の学生に対してもっと情報を漏らさないことの重要性を説明したほうがいいのではないかと思いますがどうでしょうか…


追記(2012/04/30)
非常に多くの方に読んでいただいて大変嬉しく思います。過去1年のアクセス数を超えるアクセスがこの3時間でありまして、Twitterの影響力に驚嘆するとともにこんな文章が様々な人の目に触れて良いのかと不安になってきました…正確な情報を伝えたいので、間違っている点などありましたらTwitterなどでご連絡いただければ幸いです。

追記(2012/04/30)
特許法が改正されたとのコメントを頂きまして、以下の記述を本文から削除いたしました。
特許法等の一部を改正する法律は2012年4月1日から施行されたそうです。
http://www.jpo.go.jp/torikumi/kaisei/kaisei2/tokkyohoutou_kaiei_230608.htm


なぜ研究テーマや実験内容をつぶやく(ネット上で公開する)のがまずいのかというと、一度研究内容を公開すると特許が取得できなくなり、競合する研究者に情報が漏れる可能性もあるからです。特許については以下のサイトが非常に良くまとまっているので、是非御覧ください。
発明が生まれたとき(2)~学会発表との関係~ 知的財産部   産学官連携推進本部
http://www.sangaku.nagoya-u.ac.jp/ipo/05_howto/presentation.html
こちらのサイトも非常に参考になります(ただ、情報の正確性については確認していないのでそれに関して責任は取れない点をご留意ください)。
研究者のための特許ノート(基本編)
http://homepage3.nifty.com/tsuyu/column/pat_kiso.html

上記サイトからわかるように、特許庁長官が指定する学術団体以外で発表すると、特許は申請できなくなります。特許庁長官が指定する学術団体以外のインターネットサイトで情報を公開した場合(ブログやTwitter等)は特許出願できない可能性があります。
以下に今までに私が見つけた研究者としてアウトではないかという例を挙げておきます。特許出願ができないわけではないと思いますが。

10 件のコメント:

  1. このコメントは投稿者によって削除されました。

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    1. 今年、法律が改正されたので、学術団体等の要件は不要になりました。
      平成23年度法改正
      30条第2項「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至つた発明(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項各号のいずれかに該当するに至つたものを除く。)も、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、前項と同様とする。」

      ただ、もちろん、特許権取得の可能性が低下する、手続きが煩雑になる、等は従来通りなので、公表することはお勧めできませんが。

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    2. 記事を修正しておきました。コメント有難うございます。色々と勉強になりました。既に非常に多くの方々の目に触れてしまいましたが、特許に関する正しい知識を持って頂けるよう、努めたいと思います。

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  2. 少々補足いたしますが、この場合の特許権は日本国内の権利だけに限られています。
    Twitterで公開した発明が特許となる国は、私の知る限りでは日米のみで、
    欧州では権利化できなかったはずです。

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    1. 情報ありがとうございます。特許に関しては私が勉強不足なところが多々ありますので本文には含めず補足という形で残せたらと思っております。

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  3. 競合する研究者に研究内容が漏れることがなぜまずいのでしょうか。ということを思いました。

    それにより(研究が公開されることにより)、研究がより高度化して、さらに高い知見が得られるのならば人類にとってよりよいことなのではないでしょうか。
    ミクロでみるかマクロでみるかの違いですが、研究者に求めていることはすくなくともわたしはマクロな視点での人類への貢献です。

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    1. コメントありがとうございます。少なくとも自然科学(物理・化学・生物等)の分野では「誰が一番初めにそれを実現したか」が重要になってくると思います。発明も研究も一番初めに形にした人だけが後世まで名前が残ります。マクロという意味では誰が結果を出しても人類へは貢献できますが、研究者がそう考えていると業績を出せず飯が食えなくなるのではないかと思います。

      DNAの二重らせん構造を解明したワトソンとクリックはノーベル賞を受賞しましたが、解明のきっかけになったX線回折像はフランクリンが撮影したものです。それをウィルキンスがワトソンとクリックに見せてしまったために、先を越されたフランクリンはノーベル賞を貰うことができませんでした(事実関係には諸説ありますが)。

      科学の発展に貢献出来れば社会的な評価は要らないという方もいらっしゃると思いますが、私は進行中の研究を許可無く他人に漏らされたくないです。

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    2. hyoshiokさん

      ブログ主さんも含め、科学者は人類の為とかそんな壮大な目的の為に研究なんて行ってないと思いますよ。
      飯のタネがただそう言う研究だって事なだけなんでしょう。
      だから二言目には特許と言う言葉が出てくる。

      完全自腹で社会の為だけに研究ができるなんて、どこぞの貴族くらいのもんでしょう。

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  4. 数理的な理論よりの研究では、学生がTwitterの文字数で呟いたぐらいで大した問題は無いと思います.
    しかし、分野によっては論文の形ではすぐには表に出てこない実験のテクニックや試料の入手方法などが重要であることも多いので、不用意な情報流出を避けるのは当然でしょう. 同じ研究業界で仕事をしている人でも、分野によってこういう違いがあるということを知らない人がいるものです.

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    1. 有難うございます。確かに分野によって捉え方の違いがあると思います(私の分野は応用物理です)。そのあたりの話は別の記事としてまとめたいと考えています。

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